Talk to me(トークトゥミー)感想

2023年12月28日、仕事納め帰りに観てきました。


〜簡単なあらすじ〜

主人公ミアは、母親を亡くして以降父親とは気まずい関係で、友人ジェシカの家に入り浸る日々。

ある日、気晴らしに、学校で流行っている降霊会に参加する。


降霊術では、左手のオブジェと手を繋ぎ、「talk to me」と語ると霊が目の前に現れる。続いて「let you in」と語りかけると、霊に身体を乗っ取られる。

降霊の時間制限は90秒。時間を超えて降霊を続けると、身体も魂も返して貰えなくなってしまう。


90秒のスリルにのめり込む面々。

そんななか、ジェシカの弟ライリーが降霊術を行うと、ミアの母親の霊が憑依した。ミアは母親を引き止めてしまい、降霊の時間制限を超えてしまう。

するとライリーの様子が豹変、テーブルに割れるほどに頭を叩きつけ始め、自分の目を抉ろうとする。

ジェシカが止めに入り、かろうじて一命を取り留めたライリー。

その日から、ミアは周囲に霊の存在を感じるようになる。

 


〜ネタバレありの感想〜

結構肉体的に痛々しい描写があります。


冒頭はミアが着ている黄色のパーカーがとても印象的に映ります。ミアを主人公として強く印象付けるほか、明るいようでいて周囲から浮き、不安定なミアをよく表しているように思いました。

ミアは感情移入や応援してしまう主人公というよりは、不信感を持って見てしまうタイプの主人公だなと思いました。

例えば、携帯をいじるジェシカへ絡む姿や、ジェシカの彼氏を自分の元カレと呼んで絡む姿。一方で同世代の集まりでは周囲に馴染めない姿。

降霊会の主催が「(ミアは)ベタベタしてくるから嫌い」と言ったところに表されていますが、他人との境界があやふやで、強い意志や思考がなく、漠然とした寂しさを抱えたキャラクターに描かれているように感じました。


霊は、死体のような“気持ち悪い“描かれ方をされていて、(途中に霊×性的な描写があるからかもしれないですが、)「it follows」を思い出しました。


ジェシカの彼氏(ミア曰く、ミアの元カレ)が、2回くらい霊のセクハラを受けているのも、印象的でした。かといって、作中で、ジェシカの彼氏がミアの性的好意の対象として描かれているかというと、ミアがそこまで強い関心を寄せているようにもみえなかった。


また、ミアの実家が暗いこと暗いこと。ミアの父も、途中までほとんど顔が映らない撮り方で、ミアが父を意識の外に置いていることが伝わってきます。


それから今回の最大の被害者ライリー。いたいけな少年少女が悪魔に憑かれたことで、痛々しく悍ましい相貌に変わっていくのはエクソシストものの定番ですが、ライリーは最初からどこか怖さを感じる顔立ち。案の定壮絶な変貌を遂げる。


クライマックスは、冒頭のシーンをなぞるようにして終わります。瀕死の鹿を殺せなかったミアは、最後も殺せなかったのか、あるいは殺さなかったのか。ここは明確に描かれているわけではないので、解釈の余地があるのかな、と勝手に思っています。

個人的には、自我をもって意思決定したというよりは、決めきれない躊躇に、ジェシカの行動力が勝ったのではないか、と考えました。


積み上げられたミアのキャラクターから、最後の最後、暗闇の寂しさに耐えかねて、人の手を握る描写が、「そうなるよね」と思わされる納得感がありました。

「死者は自分を認識したり同情した人間に執着する」というホラーものがありますが、それを最初から最後まで死者目線で観たような話でした。